永井豪天才マンガ家の作り方教えます! 永井豪、初の自伝的エッセイ 豪氏力研究所

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第33回 鉄腕アトムは誕生するか? だが、僕は思うのだ。完全な人間型ロボットができて、完全な人工知能が開発されても、「アトム」はできないだろう、と。人間と同じように考える人工知能が発明されて、人間と同じように動けるロボットに組み込まれたとしよう。そのとき、それはアトムのような“いい子”になるだろうか。


「人工知能型」ロボットは恐ろしい
 現実の世界では、ロボットはどう進化するのだろうか。まず、機能で言えば、「遠隔操作型」「搭乗型」のほうが、早くできることは間違いない。すでに工場や深海調査、宇宙探査ではロボットが「遠隔操作型」ロボットが活躍している。さらに、そういう人間には苛酷な環境で、どうしてもその場で人間の「判断」が必要だったら、人間がロボットに乗り込むことになるだろう。たとえば、戦争がそうだ。

 「遠隔操作型」「搭乗型」の次に、「人工知能型」ロボットができるとして、それはアトムのようなロボットなのだろうか。アトムが誕生するには、まず「人間型ロボットは必要なのか」という問題がある。人間の代わりにロボットに何かをやらせるとしたら、人間型をしている必要はない。手は2本よりたくさんあったほうが、複雑な作業ができる。足だって、何本もあったほうが安定するし、状況によっては車輪やキャタピラのほうがいいこともある。

 でも、アメリカでも日本でも、人間型ロボットへの憧れは強いようだ。ハリウッドでは『A.I.』などが撮られたし、日本では実際に人間型ロボットの開発が進んでいる。アメリカでは、「神は自分に似せて人間を作られた」という、キリスト教の影響があるのだろう。そして日本では、やはり『鉄腕アトム』の存在が大きいと思う。現在のロボット技術者たちは「アトム世代」であり、いつかお茶の水博士になって、アトムを作りたいのだ。

 昨今のロボットブームの中でも、一番人気が高いのは「人間型ロボット」だ。現在のところは、かろうじて二本足歩行するだけという段階だが、将来は人間と同じように動くようになり、自分で考えて行動する「人工知能」が搭載されるかもしれない。そうなれば、もうこれは機械でできた人間と言えるわけで、それは即ち「鉄腕アトムが誕生」することだということになる。

 だが、僕は思うのだ。完全な人間型ロボットができて、完全な人工知能が開発されても、「アトム」はできないだろう、と。人間と同じように考える人工知能が発明されて、人間と同じように動けるロボットに組み込まれたとしよう。そのとき、それはアトムのような“いい子”になるだろうか。僕は、何か怖いもの、そう、“怪物”になると思うのだ。危険な要素が、かなり感じられる。


人間とは、魂ではなく「容れ物」?
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20代前半、仕事場のベランダで将来へ思いを馳せる
 その理由は、彼らが“金属の体”を持っているからだ。金属の体だから、ケガなんかしない。もし傷ついても痛くない。血も出ないし、壊れたら修理すればいい。だからロボットは、生命の危機感なんか持たない。人間だと、ちょっと体を切っただけで痛いし、怖い。死ぬかも知れないと思うと、恐怖で狂いそうになる。苦しくない死に方もあるというけれど、ギロチンで首を斬られた人も数秒間は生きている、という研究もある。どうやっても、死ぬのは怖い。

 でも、ロボットなら、怪我するもの死ぬのも怖くないのだ。そういうロボットが、兵士として使われたらどうなるか。昔の日本でも、一向一揆など宗教的な信念があると、クワ一丁で侍に向かっていった。死を恐れない農民たちは、戦国武者が閉口するくらい強かったという。その農民が、金属製で力も強いロボットだと、一体どうなることだろう。

 それに、金属製のロボットには、「人間たちは柔らかいけど、オレたちは固いぞ」「オレたちは、ひ弱なあいつらとは違うんだ」という意識が芽生えるんじゃないだろうか。そういう存在が、人間と同じ考え方をするとは思えない。きっと全てにおいて、判断基準が違ってくる。明らかに劣る存在の人間を、アトムのように思いやってくれるだろうか。むしろ人間に対する優越感から、見下すようになるのではないだろうか。僕だって、自分が突然強くなったら、性格がまるっきり変わってしまうと思う。

 結局、「人間性」というのは、このひ弱な肉の体ゆえに存在するのではないだろうか。よく、「肉体は単なる容器であって、魂こそが人間の本質だ」というが、実際は逆なんじゃないか? と僕は思っている。容れ物がひ弱いからこそ、魂が謙虚さや優しさを持っていられるのだ。つまり、人間の本質は「魂」ではなく、このひ弱な「容れ物」にあるのだと思う。これが、ロボットが人間に近づいてもアトムにはならない、いや、人間に近づけば近づくほど、ロボットはアトムから遠くなって、恐ろしい怪物になると思う理由だ。しかし、それらのことを乗り越え、ヒューマニティーあふれる“アトム”が生まれれば素晴らしいと思う。

 ところで、横山先生と手塚先生の話ばかりしてきたが、僕がアシスタントを務めた石ノ森章太郎先生も、ロボットマンガを描いている。『人造人間キカイダー』『ロボット刑事』などがそれだ。だが、『サイボーグ009』『仮面ライダー』などの「サイボーグもの」のほうが石ノ森先生の真骨頂だろう。それは、石ノ森先生が人間の苦悩、葛藤をテーマにする人だったからで、主人公が“人間の弱い心”を持っていることがキモだからだ。ロボットの主人公にしても、キカイダーには「良心回路」があるし、K(ロボット刑事)も詩を書いたり泣いたりする。どちらも、人間以上に人間くさい。

 ついでにいうと、僕もご存じのように、『キューティーハニー』という等身大のロボットヒロインを描いている。完全な「人工知能型」ロボットだ。だが白状すると、ハニーをロボットにしたのは、ただただ「女の子が変身するとき、ハダカにしたい!」という、不純な動機からなのだ。だから、先輩たちのロボットマンガと比べたりすると、「一緒にするな!」と、叱られてしまうかもしれないな……。


<第33回/おわり>

(c)永井豪/ダイナミックプロダクション2002-2003
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永井豪(ながい・ごう)
1945年9月6日、石川県輪島市に生まれる。石ノ森章太郎氏のアシスタントを経て、'67年『目明しポリ吉』でデビュー。'68年『ハレンチ学園』を連載開始、たちまち大人気を博し、以後現在に至るまで、幅広いジャンルの作品を大量に執筆し続けている。代表作は『デビルマン』『マジンガーZ』 『凄ノ王』『キューティーハニー』など多数。


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