2025年5月5日制作 2025年5月5日公開 |
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赤ちゃんの股関節脱臼のあと 成人してから診断され痛みで困る 寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全) acetabular dysplasia についての解説と研究支援のお願い |
どんな病気? |
股関節は球状の「大腿骨頭」とそれを受ける骨盤の「寛骨臼(臼蓋)」から構成されますが、寛骨臼形成不全とはその受けである寛骨臼のかぶりが浅い(被覆が不十分)な状態です。 病院でレントゲン検査を受けられた場合、ドクターはCE角(center edge angle)という角度を計測します。その角度が20°未満で診断されます。20~25°は境界型(病気になるか不明瞭な角度)、25~30°は正常とされます。 |
『寛骨臼形成不全』がもたらす深刻な股関節障害 |
『寛骨臼形成不全』は子どものころや若い間は症状がありませんが、ある日突然痛みだし、手術(骨盤骨切り術や人工関節置換術)が必要な状態であることが突き付けられます。なかには妊娠中に赤ちゃんの分だけ体重が増加したことで痛み出すこともあります。出産後に赤ちゃんを抱っこしなければならない状況で、この病気がわかった場合にお母さんは本当に困ってしまいます。 あなたがもし「かぶりの角度が20°もありません」と言われた場合、多くは40歳前後で痛みが出て、65歳前後で人工関節が必要になると言われています。日本人の人工股関節手術の原因のなんと8割が『寛骨臼形成不全』なのです。小児期にわかった場合には、5cmのキズでできるソルター骨盤骨切り術が可能です。小学生高学年以降~40歳代で手術治療が必要な場合、人工関節にはまだ時期尚早ですので、トリプル骨盤骨切り術もしくは回転骨盤骨切り術が選択されます。 しかしながらできれば手術はしたくありません。股関節が悪くなる大きな原因は股関節への負担(重労働・肥満など)です。ですから筋トレを欠かさず、体重管理をすることが何より大切です。ですがご自分が『寛骨臼形成不全』であることがわからなければ予防のしようもありません。まずは一度でよいからレントゲン写真を撮ることが大切です。 |
日本人に極めて多い日本人病 |
日本人の『寛骨臼形成不全』有病率は13%(7.7人に1人)にものぼります。海外では2~5%ですので、日本人だけに極めて多い病気“日本人病”であることがわかります。 |
なぜ日本人だけに多いのか? |
なぜ日本人だけに多いのか長年の謎でした。私は「その原因は縄文遺伝子にあるのではないか」、という仮説を立て、これを探求する研究を始めています。最近大きく進歩したDNA解析の結果、縄文遺伝子は現在存在する大陸アジア人はもとより、欧米のどの民族ともかけ離れた独特な遺伝的特徴があることが判明したことから着想した世界初の研究となります。現代日本人はこの縄文遺伝子を約10%受け継いでいます。この仮説が正しければ、『寛骨臼形成不全』が日本人だけに13%も存在する理由として理にかなっています。 |
縄文人骨による研究 |
国立科学博物館(つくば)との共同研究の許可をいただき、2024年8月に所蔵されている153体の縄文人骨標本すべてを観察した中で、骨盤の状態が良いものは21体36股関節ありました。その股関節のかぶりを計測したところ、寛骨臼形成不全が見られたものが7体11股関節ありました。つまり33.3%の縄文人において寛骨臼形成不全が確認されました。この結果は2025年1月に第40回九州小児整形外科研究会で発表し、大きな反響をいただきました。次回5月に開催される第98回日本整形外科学会学術総会でも口頭発表に選出されております。 この時の計測法は、分度器を工夫して簡易的に計測したものです。科学的分析のためには、より正確な方法での計測が必要になります。通常の病院でしたら骨盤のレントゲン写真やCTを撮影して計測しますが、博物館内には撮影機器がありません。持ち出して撮影することも許可はくださいますが、万が一の破損を考えると躊躇され、他の方法を考えなければなりません。3Dデータをそっくり得るためには3Dスキャナという機器が最適であることがわかりました。実際、海外の考古学や人類学の調査ではすでに使われていることも教えてもらいました。これがあれば博物館内でデジタルデータとして収集でき、自宅へ持ち帰り後パソコン内での計測処理が可能になります。 |
3Dスキャナの必要性と研究支援のお願い |
今後の研究に、この3Dスキャナが不可欠ですが、経済的に困っております。私自身の病気により一般病院の非常勤勤務であり、さらに高齢なことから研究助成の対象外なのです。研究助成のほとんどが、研究機関の所属であることが大前提であり、また若い40歳代までが対象なのです。ぜひこの研究に賛同いただき、ご支援をいただけたらうれしく思います。 クラウドファンディング「ForGood!」開始予定ですのでどうかよろしくお願いいたします。 |
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制作者について
星野弘太郎 1991年鳥取大学卒業 1999年鳥取大学大学院修了 医学博士 小児整形外科医 妻1人娘2人犬1匹 |
資格 | 日本整形外科学会専門医, 日本小児整形外科学会認定医、小児運動器疾患指導管理医師、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本スポーツ協会認定スポーツドクター、日本リハビリテーション医学会臨床認定医、厚生労働省義肢装具等適合判定医師、身体障害者福祉法指定医、日本医師会認定産業医 |
所属 | 日本整形外科学会、日本小児整形外科学会、日本整形外科超音波学会、日本股関節学会、日本リハビリテーション医学会、日本リウマチ学会、日本骨粗鬆症学会、中部日本整形外科災害外科学会、日本小児股関節研究会、日本脳性麻痺の外科研究会、中四国小児整形外科研究会、日本小児多職種研究会、日本小児保健協会 |
役職 |
日本小児整形外科学会 健診委員会副委員長,国際委員会,用語委員会 日本整形外科超音波学会 幹事 日本整形外科超音波学会 教育研修委員会委員 日本整形外科超音波学会 乳児股関節エコーセミナー講師 日本小児股関節研究会幹事 中四国小児整形外科研究会幹事 |
受賞歴 |
●第17回日本骨形態計測学会学会賞「腸骨スラブ標本を使った新しい海綿骨構造解析法とクラスタ分析による形態学的分類」(1999年) ●日本小児整形外科学会Murakami-Sano-Sakamaki Asia Visiting Fellowship(2013年)ムンバイ ●第32回大正Award日本股関節学会奨励賞【最優秀賞】「超音波診断を利用した学童寛骨臼形成不全スクリーニングの試み」(2021年) |